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(本文全文) 多くの若者が「社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)」を目指すようになりました。官でもなく、営利だけを求める民間企業でもない「新しい公共」といわれる分野です。社会に横たわる課題を解決することに挑戦する人たちで、ベンチャースピリッツを持ち合わせています。その第一人者で、病児保育という新しい事業分野を開拓した駒崎弘樹さん(フローレンス代表理事)に挑戦への思いを聞きました。 駒崎弘樹(こまざき・ひろき)氏 79年生まれ。大学卒業後、フローレンスを立ち上げ、日本初の非施設型の病児保育サービスを展開。著書に「『社会を変える』を仕事にする」などがある。 夏野 駒崎さん、お子さんは? 駒崎 2人います。 夏野 始めたときにいらっしゃった? 駒崎 始めた時は独身男子です。本当にわけが分からなかった。僕も保育士の資格をとって実習もしました。現場に入るといろいろなことが分かりましたが、逆に門外漢だからこそ見えたことがあったと思います。もし保育業界の中の人だったら病児保育をやろうとは思わなかったでしょう。 今月、日本で初めての障害児専門保育園を始めました。これも門外漢だったからできたのだと思います。日本の保育園は基本的に健常児を預かります。医療ケアが必要だとリスクがあり預かれないからお断りしているんです。 障害のある子どもの母親はその5%しかフルタイムで働いていません。95%の親は働いていない。これでは親は煮詰まっちゃう。虐待もあるし、離婚も多い。これはおかしい。 障害児専門保育園をやろうと思ったきっかけは世田谷区の障害児の母親からの声でした。育児休暇が終わったけれど、預けるところがない。彼女と一緒に保育園を探したけれど、東京では見つかりませんでした。1200万人都市、世界有数のメガロポリスなのに、1人の重症心身障害児も預かれないのはおかしい。これはもうオレがするしかないと勝手に思ってつくったのです。 保育園は障害児を預かっていないから、障害児の通所施設が日本にはあります。その通所施設には4時間分の補助金しか出ていませんから、どこも4時間しか開いていません。だから僕は延長して、10.5時間開こうと考えました。そうすると親はフルタイムで仕事ができます。制度が想定していないやり方だったので、都からいろいろ言われましたが、最終的に妥協を引き出せました。それで10.5時間開所している日本で初めての障害児専門保育園を杉並区荻窪にオープンしたらすごく喜ばれました。 夏野 そのために引っ越してくる人もいるのではないですか。 駒崎 東京都以外の方から問い合わせもありました。これも制度にしようと思っています。今は力技で制度のはざまを縫って運営しているのですけれど、なかなかそこまでガッツのある事業者さんだけではありません。例えば延長すると補助金が加算されるような仕組みにするだけで参入しやすくなります。そうすればいろんな事業者が参入してきてインフラができます。僕たちの役割は砕氷船です。南極で一番最初に氷を砕く人。その後は航路ができるので大きなタンカーが通ればいいのです。 夏野 その発想はいい意味で政治家のようですね。駒崎さんが厚労大臣になってもらえればすばらしい。日本は子どもが少ないのだから、子どもを大事にするしかない。それなのに生まれてきた子どもすら大事にできてない。でもそこに砕氷船で新しい航路を見つけてくれた。次は生まれてくる子どもをもっと増やさないといけない。そうなると全体の流れは家庭だけで子育てするのではなくて、社会で子育てする仕組みに移すしかないでしょう。 日本は少子化が著しいのに、妊娠の20%近くの中絶件数がある国です。そのほとんどが経済的な理由とか、産むと自由になれない、といった理由です。そこを解決してあげることが必要です。 駒崎 親が面倒をみられない子どもたちを育てる児童養護施設の卒業生たちは14%しか大学に行けていません。高卒の5割が進学している時代に、経済的な理由で進学できないのです。貧困が再生産されるだけなんです。例えばそこに奨学金を入れることが大切だと思います。 夏野 奨学金だけでなく、教育も手厚くするといいですね。例えば養護学校でITと語学は小さいときから、超一流の教育をする。普通の家庭の子どもがうらやむような教育を授けてあげるくらいでいい。 駒崎 それもいいですが、日本の問題は施設養護が8割と多いことです。一方、世界的な傾向は施設養護から脱しようというのが流れです。施設では8時間交代で何人もの人が面倒を見ます。愛着が形成されにくいのです。里親とか特別養子縁組がメーンであるべきですけれど、日本の場合は特別養子縁組がとても少なくて、施設に頼っています。また里親になる親は働いてはいけないという規則もある。そこにイノベーションが必要です。 夏野 国に頼るのではなくて、砕氷船の役割を演じようとしている人たちを応援したいですね。 駒崎 そういう制度イノベーション、ソーシャルイノベーションを仕掛け続けていきたいと思っています。 夏野 やっぱり駒崎さんはいい意味で政治家になるべきですね。 駒崎 そうではなくて、官僚や政治家の方は僕らのパートナーとして僕らが起こしたイノベーションを制度化して拡散していただくことにご協力いただきたいなと思っています。 夏野 それはもちろんです。でも実務を知らないリーダーは思いきった提言ができない。だから駒崎さんのような人が厚労大臣になって欲しい。実務がわかっている人が大臣になった方がいいと思うんです。官僚でもいいですが。 駒崎 実は僕、2010年1月から6月まで内閣府の官僚でした。ポリティカルアポインティー(政治任用)で税制改革を担当して、運良く寄付税制が改革されました。そのとき大きな学びがありました。当時は鳩山内閣ですが、総理が税制改革しようと財務省に言うと、財務省の課長レベルが「法律との整合性を考えると問題があり、できません」と平気で言うんです。そんなことは普通の会社ではありえない。それが普通だという国のガバナンスの難しさを知りました。総理大臣になったら魔法の杖で一気に変わると思ったけれど、そうじゃないんだと学びました。一方で、解くのが難しい社会的課題を実体験に基づいて、ひもといて解決することが必要だと気づきました。民間にいて政府に「やれやれ」と注文するだけではなくて、ちゃんと対案を持って、こうすれば解決できるんだと、官僚と戦っても負けない自分にならなければいけないんだなと痛感しました。 夏野 それが日本特有なんです。アメリカだと官民の入れ替わりがあります。途中で入ってくる人が使命感を持ってくるので、何かを起こそうとします。それが刺激になるから内部からも変革が起こる。日本はそれがありません。30年間、同じ釜のメシを食った人ばかりです。それが最悪です。 駒崎 僕もリボルビングドア(回転ドア)をつくっていきたい、と思っています。今内閣府に提案しているのは官僚がNPOに出向してくるような制度を提案しています。 夏野 問題は身分保障です。官僚として身分保障されている人は学びが少ない。本当は局長以上になる方は10年以上は民間経験がないとなれないなどとすべきだと思います。どこかの会社でリアルに事業の経験がある、あるいは途中から官僚になったという人でないと局長にはなれないという仕組みです。そうしないと政策が現実から遊離したものになる。政治家も実は同じで、当選5期目の国会議員が大臣になると、もう世の中の常識がわからなくなります。政治家ですらリボルビングドアが少ないのは日本の硬直化の最大理由だと思っています。 駒崎 でも安倍政権が経済問題と女性を組み合わせたのは評価できると思います。今までは女性問題は福祉の範疇(はんちゅう)で、メインストリームにならないようなところでしか議論されなかった。これは良いことだと思います。 ただ、安倍政権をみていると、封建的な家族観が見え隠れしています。そこはなんとかしてほしい。これから家族のあり方とは、フレキシブルかつ多様な家族を認める懐の深いものに変わらなくてはいけない。例えば同性愛者などのカップルが里親になっても問題ないというように、様々な家族観を受け入れていかないといけないと思う。 夏野 結婚しなくても子どもをつくってもいいし、シングルマザーがパパの違う子どもたちを育てたって構わないんですよ。 駒崎 そういう多様な家族観を受け入れる懐の深い日本をつくっていきたいと思います。 夏野 そもそも封建的な家族観が根付いたのは実は戦後のことなんですよね。 駒崎 そうなんです。もっと近代史を勉強してほしい。 夏野 今の家族観になったのは、現代も現代、1960年以降の話なんです。 駒崎 専業主婦の登場自体がかなり近代です。専業主婦の比率は戦後徐々に高くなり、ピークになるのは1970年代です。それが今は下がっている。専業主婦というのは日本の伝統でもなんでもない。さもそれが日本人に根ざしているみたいな言説は間違っています。 夏野 安倍政権の女性閣僚にはそういう考え方の人もいる。女性の敵は女性なのかもしれません。安倍政権のアキレス腱(けん)になる可能性があると思います。 駒崎 でもまあ女性が内閣に入らないよりは入った方がいいから、これからちょっとずつ広がっていけばいいかなと思います。今の社会の問題は「おかしい」と批判するばかりで、対案を出さないことです。 夏野 ワーキングマザーばかりが集まったイベントに参加し、「もっとみんな発信してよ」と投げかけると、「発信したくない」「かっこよくない」という雰囲気なんです。「言わないと変わらないですよ」とさんざん話したのですが、「どうせ私たちが言っても変わらないから」と言うのですけど、何も言わないと余計変わらない。 駒崎 面白い話があります。アメリカのカーペット会社で、インターフェースという会社があります。カーペットは製造過程で、ものすごく環境負荷の高い商品らしいのです。そこのメーカーの社員が社長の机の上にある本を置きました。サステナビリティー革命という本です。社長が訓話を毎月しなくちゃいけないから、その本を読んでみたら、どうやら自分の会社は地球の敵らしいことに気づいて目が覚めたらしいのです。訓話で「俺たちは変わる」と宣言して、環境負荷を低減する改善運動をしたのです。世界で一番環境負荷の低いカーペット会社になって、環境負荷が低いということを通じてコストダウンができるようになったのです。 結果的にとても利益率が上がった。アル・ゴアの『不都合な真実』が出版されて、また注目され、さらに好業績となった。そのきっかけが社長の机の上に本を置いた女性社員なんですが、なぜ本を置いたのか。女性社員の大学生の娘が「ママの会社は地球の敵よ。社長に読ませてちょうだい」と言ったのがきっかけ。幹部でも何でもない。社長に読めとはいえないからこっそり置いたという話です。 チョウの羽ばたきが嵐を起こすっていうまさにカオス理論です。だからみんな工作員になるべきなんですよ。ヒットを打っていれば、いつかホームランになる。やんなきゃヒットにもならないのですから。 夏野 いろいろ仕掛けましょう。「悪だくみ」じゃなくて、「良いだくみ」! 駒崎 僕は歴史おたくなんですが、日本は長篠の戦いのときは世界最大の鉄砲国でした。そのきっかけは、種子島に漂流した外国人がたまたま鉄砲を持っていたからです。すごい偶然です。その外国人の存在がものすごく大きい。それが世界最大の鉄砲戦である長篠の戦いを生んだ。人間ひとりの力はものすごく大きい。ワーキングマザーがなえている暇はない。それぞれの会社で工作員になるべきなんですよ。 夏野 今はITがあるから、いろんな試みが広がるのは早い。しかも人を寄せるのも早い。 駒崎 もしもツイッターがなかったら、都議会のセクハラヤジ問題も広まらなかった。騒ぎの後、議会はすごく静かになった。よっしゃ、と思います。恥ずべき政治家のことはどんどん炎上させればいいんです。 夏野 炎上っていうのは悪いことのように言われるけれど、それは議論を巻き起こしているわけです。賛否があるから炎上しているのだから、一方的に非難されるべきことではない。いろいろ炎上させましょう 駒崎 日本の不合理をどんどん燃やし尽くしましょう。 夏野 僕は自分の娘が生まれたときにキッズケータイをつくったんです。子どもにも本物のケータイを持たせたいという思いでした。ケータイを作っているのに自分の子どもに持たすべきケータイがないのはおかしいと。それでつくったのです。もっと子どもに接する人が多くなれば、日本の将来を考える人も多くなる。世の中のリーダーは、次世代にどうなるかという長いビジョンを持たないといけません。ますます戦ってください。徹底的にバックアップしますから。 (コメント) 先日掲載した記事の続編です。