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(記事全文) ◇過酷労働、疑問徐々に薄れ 「良かったね」。2013年2月、男性(26)=東京都=が飲食チェーンを展開する会社に正社員として採用が決まったことを電話で伝えると、郷里の母は声を弾ませた。中学卒業後、別の飲食業などで働きながら高校卒業資格を取り、一時は大手企業にも勤めた。だが、ずっと非正規だった。「昇進やボーナスのある正社員になって一人前と思っていたので、うれしかった」。わずか1年後、休職に追い込まれるとは思いもよらなかった。 男性は翌月から都内の和食店に配属される。経験者として仕入れや調理全般を任され、張り切った。 同僚と5人で毎日600〜700食を作ると、労働時間は1日14時間を超えた。一人も休めないぎりぎりの人員は、気持ちをざらつかせる。ある日、後輩が間違った皿に料理を盛りつけているのを、見ていながら誰も注意せず、先輩がやり直しを命じたのは60皿分を終えた後だった。 会社の寮に一緒に住む20歳の新人がいた。連日の深夜残業で遅刻がちとなり、男性が毎朝起こして出社させた。しかし、「勤務態度が悪い」といじめの標的になり、ある時は終業直前に「タケノコ3キロ分を切れ」と命じられた。手伝えば先輩に怒られるため、見て見ぬふりをした。 後から振り返って怖いのは、閉ざされた環境で働くうち、こうした行為に疑問を覚えなくなったことだ。この新人は結局、2カ月で退職。調理場では1年で8人が辞め、そのつど部品を替えるように穴埋めがされた。 残業は大抵月100時間を超えたが、あらかじめ決まった「固定残業代」が給与に含まれ、いくら働いても収入は増えない仕組みになっていた。 心と体は正直だ。突発性難聴になったのは14年2月。腰痛がひどくなって春に救急搬送され、休職を余儀なくされた。その後、うつ病の診断も受けた。 ◇ 残業代不払いやパワハラなどを重ね、社員を「使い捨て」するブラック企業に、法律すれすれのアドバイスをする弁護士や社会保険労務士を「ブラック士業」と呼ぶ。 「私がブラック士業? 私は経営者の救世主と言われているんですよ」。都内などで複数の事務所を経営する社労士の男性は記者の質問に反論した。 この社労士は会社側に立った労務テクニックに詳しく、近年顧問契約が急増。固定残業代を奨励し、辞めさせたい社員がいる時は、配置転換や降格、査定を変えての給与引き下げをアドバイスする。「金がなくなったら辞めますよ」 それでも辞めない社員はどうするか。社労士は一例を明かした。社員にパワハラのうわさがあったため、相手の社員に民事訴訟を起こさせたのだ。社長は「そこまでするのか」と絶句したが、「会社のため」と説得したという。 批判は百も承知だ。社労士は「義務を果たさない社員が10人のうち1人いたら、企業にとって大きな負担。会社がつぶれれば、その家族も路頭に迷うんですよ」と強調する。 生家は極貧だったという。母子家庭で、母は小さな町工場で働いていたが倒産で職を失った。 「中小企業を守ることは、そこで働く日本人の全労働者の7割を守ることです」 ◇ 年が明け、和食店を休職した男性は引っ越し準備に追われていた。病気が完治すれば職場復帰する意向だが、会社は寮からの退去を求めてきた。 2カ月で辞めた新人のことが最近しきりに思い出される。記者から聞いた社労士の言葉にならえば、新人は「義務を果たさない1人」で、「10人のうち9人」の側にいたのが当時の自分。「僕は会社側に加担していた」 「9人」の側の社員がいつ心身を害し、なじられる側になるか分からない。自分がそうなった今だから思う。「社労士が守っているのは結局、会社の経営者だけだ」と。 あの新人に「あの時は助けられなくてごめん」と伝えたい。 *元記事は以下のリンクから読めます。 http://mainichi.jp/shimen/news/20150107ddm041040055000c.html