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前回は、女性と男性の働く目的の違いや、子育てと仕事の両立をするために自ら環境を整えるなど、男性からすると驚くことだらけのトークでした。今回は、どういう結論が待っているのか。楽しみでもあり、身につまされるようでもあり。さて、さて。
松本理永(まつもとりえ)
株式会社サニーサイドアップ バイスプレジデント。同社創業メンバーとして高校生の時にジョインし、以降同社の基幹であるPR事業を担う。独立系のPR会社として、発想も、領域も、手法も、枠にとらわれない同社ならではのPRを展開。今秋より文教大学情報学部非常勤講師。私生活では25歳になる双子の男子と9才の女子の3児の母。
小林麻衣美(こばやしまえみ)
株式会社HappinessWithin 代表。外資系広告代理店などを経て、独立。その後も引き続きコミュニケーションデザインプランナーとして、大手食品会社などのPR、デジタルやソーシャルプロモーションなどを含めた施策について、立案から実施まで多岐に渡り携わる。私生活では5歳になる男子の母。毎日仕事と育児と家事に追われながらも楽しい日々を送っている。
■ コミュニティが働くママを救う?
関橋:北欧では、何事も男女で平等にシェアしているのでいいですね。日本でも戦後しばらくまでは自営業が多く、お母さんも働いていました。まだ核家族ではなかったので、子育てはみんなで支えるのが当たり前。子どもたちは、そういう働くお母さんの背中を見て育っていました。
松本:今そうだったらいいのにな、と思います。うちは長男・次男が双子で25才。下の娘が今9才、小学校3年生です。男子の双子の子育ては大変でしたが、20代前半の出産で自分も若かったからやれたのだと思います。
娘は30代後半になって生まれたので、こちらも大人になっていますし、女同士で話も通じやすく全然違いました。娘のときは、ゴールデンウィーク前に出産で、ゴールデンウィーク明けすぐに復帰したのですが、息子たちが高校生でしたので、ものすごくかわいがって面倒を見てくれました。
息子が文化祭の準備で土日に学校でトンカンやっているときに、仕事の現場に行かなければならず、娘を見てくれる人がいないので、高校にいる息子に預けたこともあります。さすがに、友達のいるところでおむつを替えるのは女の子だから可哀想と、隣の教室に行っておむつ替えたりしたそうです。そうやって、みんなで育てた感じです。
小林:いいですね、そういうの。息子さんの価値観も、それですごく成長された気がします。
松本:子どもが生まれるとこんなに大変なんだということを、高校生のときから学んでいますね。だから彼女ができたりしても、ほんとに子どもってこういうことなんだ、ということをいい意味で知っている。こんなにみんなの手がかかって、大事にされる存在をつくるということなんだよ、と。それは良かったと思います。
私は上の双子が小さいときすでにシングルマザーでしたので、さすがに実家に戻って両親に子育てを手伝ってもらっていました。
小林:ワーキングシングルマザーは、ご両親のサポートがないとなかなか難しいですよね。
松本:保育園も、夜遅くまで預かっていただける所ができたのは、働くという意味では助かるんですが、子どもが寝た後に迎えに行くのでいいのか、という面もありますよね。
知り合いの出版社に勤めるご夫婦は「ファミリーサポーター」という区の制度を利用して、まず保育園に迎えに行ってもらい、別の在宅ママに預かってもらい、夜遅く夫婦のどちらかがお迎えに行く、というようなことを続けていました。このご両親の大変さを考えると、また自分の子供の保育園時代を顧みても、一箇所の保育園が夜までみてくれたらどんなに助かるだろうと思います。
でも一方で、夜中まで預かってくれる保育園が増えれば増えるほど、もっと働けるということになるのも本末転倒だと感じるんですけどね。
関橋:シングルマザーの場合だと、いいシェアハウスがあったとして、そこでみんなで助け合いながら子育てするのはどうですか?
小林:そういう需要はあると思いますね。専業主婦の人たちは、用事があると預けっこしたりして協力していますから。
松本:保育園のママ同士は預けないですね。基本、預けられないから。でもコミュニティで育てられるのはいいですね。上の二人が小さい頃は、四谷の下町的な地域に住んでいたので、双子で目立ったということもあるのでしょうが、登下校時に歩いているとみなさんが声をかけてくださって、見守られて育ちました。
駐車場のおじさんがヤクルトを買って冷やしておいてくださったり、暑いから少し休んでいくように声をかけてくださる銀行の方がいらしたり。それから自分の友人はまだほとんど独身だったので、みんなでよってたかってかわいがってくれました。職場と自宅も近かったので、鍵を忘れて学校帰りに会社に来ることもありましたが、みんなが温かく迎えてくれていました。
関橋:昔は、そうやって地域で子どもを見守って育てたものでしたよね。
小林:コミュニティは昔とは形が違っていても、フォローしあっていけるのはいいですよね。同じ境遇の女性たちが助け合ってというのも、自発的にすでに出てきていますし。少しずつサポートされる世の中になっていったらいいと思います。とはいえ、その中で、深くは頼りすぎず、依存しすぎず、それぞれが自立していけるようになるともっといいですね。
松本:でも、すごくお仕事がんばっているお母さんの子どもだったら、悪くなるわけがないと思います。
小林:そう松本さんにおっしゃっていただけて、少し勇気が出てきました。関橋さんとのお仕事で、地方出張先での会議に息子を同席させていただいたときは、ずっとおとなしく座っていてくれたんです。ちょっと感動しました。
松本:うちの子どもも、大人と一緒の場にいることが多かったですが、それはいいことだったと思います。
関橋:周りに人が大勢いるのがいいと思います。自分は網元の家で生まれたので、漁師が常にたくさんいました。いろんなサンプルが大勢いて、怖い人もいれば優しい人もいる、賢い人もいればいんちきなのもいたり、社会性が身につきますね。
■ 時代のニーズはすでに次に行っている?
松本:今、よくうちの社員に私がやってきたような子育ては自分たちには真似できないと言われてしまいます。育休もまともに取りませんでしたから。子どもを産んで働き続けている社員もいるのですが、クライアントさん相手のPRの仕事でうまく両立させるケースを、結果的にはまだ見せられていないですね。
自分は楽しく毎日仕事をして、子どももいて、というのを見せようと思ってはいるのですが、たぶんやりすぎているので、若い人たちは、あんな風にはなれない、なりたくないと感じていると思います。毎日帰りも遅いですし。
小林:そこは目指さないという女性が増えているのは分かります。自信がないという人も当然多いと思います。家庭を大事にしたい人、子どもとできるだけ接していたいという人が増えているので、むしろマネージャー職なんかいらないから、時短でいいという人が多いと思います。
関橋:そっちが多いのはそうだと思います。でも働く女性をテーマにしたCMではバリバリ働いてしっかり両立しないと、というような描き方になっている。世の中がそれをプッシュしている。
小林:夢はいつでも専業主婦なんですが、たどりつけません、なかなか(笑)。
松本:「専業主婦」ってすごいことですよね。今の東京ですと夫婦のうち一人だけが働いて、子どもを産み育てるのは難しい。どうしても共働きになるじゃないですか。そうすると女性の働きづらさの問題に直面する。しかも今の若い人は日本経済が成功してきた経緯を知らず、過酷な現実だけがある。これからどうなっていくのでしょうね?
小林:昔は、この先お給料もだんだん上がっていくだろうという将来像を描けたけれど、今はこの先本当にどうなるか分からない、想像ができないというのがあるかもしれないですね。
関橋:政府が言っているようなやり方では、うまくいかないかもしれませんね。
松本:タイムラグがあって、もうそこは求めていないから、ということになるかもしれません。
関橋:なんとなく、男にとって都合のいい女の人を作ろうという気配も見えるじゃないですか。
松本:あるいはすごく極端ですよね。「経営者になれ」みたいな。
いまは普通に働くのでもお母さんは大変なのだと思います。また、子育てだけでなく介護も同じような状況にあるので、子どももいながら親の介護もとなるとそこで無理して働けない、となってしまいます。
関橋:美大系の大学で教えているので女子が多いのですが、いまの女子はちゃんと正社員で就職したいと思うんですよ。そうやって会社に入った後に、女性はすごく変化するんですか?そうでもないですか?人にもよると思いますが。
松本:比較的新卒の定着率はいいので、女性だけがそんなに入社して変わったということはないと思います。
関橋:男性のほうが、環境などいろいろなファクターで変わりますね。そうでもなかった奴が急に伸びることもある。
松本:男性は、本当にそういうことがありますね。女性は、そもそも就職する時点で結構優秀じゃないですか。だから「化ける」というより着々と成長する。男性は「あの人を採用したのは本当にすごい」と言われるくらい、いまはすごく評価されているけれど、昔は目立たなかったという人が何人もいますね。何かのターニングポイントでぐんと変わる。
関橋:男のほうが影響されやすいんですかね。
松本:目覚めてないんだと思います。
関橋:そうですね。すごく幼いんですよ。お母さんにずっと庇護されてきて。
松本:それが、目覚めたときにすごく力をつけていく人がいっぱいいますね。
関橋:早く目覚めればいいんですが。ではこの先、女性が働きやすいような環境ができていくと思いますか?
松本:働かざるを得ないような状況で、共働きが増えていくことは確かでしょうが、意識としては家庭に入りたい人も増えてきている感じがします。自分たちが何とかやっていける分だけあればいいと。日本経済全体としては心配な部分はありますが、人としての欲という面では、贅沢もせず、ミニマムでいいというような傾向があると思います。
自分はバブル世代ギリギリくらいですが、友人たちの集まりに小さい頃から接していた息子たちには、「お母さんたちは本当にバブル世代」、と天然記念物みたいに言われます。
たとえば起業家でも、いまの若い起業家は社会起業家的な人が多い。バブル世代のような感覚をすごいなとは思うらしいですが、自分たちがそれをできるとか、やりたいとかは思わないそうです。
小林:豊かさの概念が違いますよね。ロボットやバイオなど一部の成長分野を除いて、経済は伸びようがないというのが正直なところで。
関橋:食料は限られるし、小さく暮らすしかないわけですよ。卒業するゼミの学生に、私も入れて10人でリレー小説を書こうと提案しました。内容は自由だけれどルールは20年後の自分を描くということのみ。彼らが想像した20年後の未来は、総じていまとあまり変化していないけれど、暮らしは少し苦しくなっている。
面白いのは、男子の多くは妻がいて子どもがいる自分を設定しているのに、女子はほぼ全員ひとりで生きている自分を想定しました。家族のことはかけらも出てこない。
小林:えー、不思議! 面白いですね。
関橋:男はお母さんに大事にされて、「家族」というのが染みついているのかもしれないですね。
松本:でもそれはいいことですよね。
関橋:女の人はそれより自分が何かやりたいことがある、というのが強いんじゃないですか? 女子たちは、あえてひとりで生きている自分を描いている印象がありました。ひとりでいることを選んで、孤高に生きているような感じなんです。だからもう次の時代になっているのかもしれないと思わされました。
小林:男女逆転するかもしれないですね。
関橋:いま、大学を卒業するくらいの女子たちは、ワーキングマザーの大変さぶりを見ているから、自分はそれは無理と思っているのかな。
松本:それでワーキングを捨てずに、マザーのほうを捨てているということですね。時代とともに女性も変わっていくし、夫婦関係や親子関係も変わっていく。女性の求めることが変わっていくので、自分のときがどうだったかということが、個人差を差しおいたとしても、相当違ってきていますよね。
うちの会社でも、新たな世代の人たちは子どもを産んでここに戻ってくるよりも、「ありがとうございました~」と言って、また次の場所に軽やかに行ってしまうんではないか、というような漠然とした感じがしています。
私たちの世代がいろいろな制度を作ったとしても、くるっと「そんなことじゃないのに」という風で、すごく差があるような感じもするんです。
うちの息子たちが大学生の頃、友人たちがよく泊まりに来ていたのですが、本当に男女の役割の固定観念がないんですよ。女の子が早く起きて、お母さん朝食の支度手伝いますとかいうのもないし、もちろん男子もないんですが、みんな同じようにジャージで起きてきて、ただ「いただきま~す」と。外で飲んでも割り勘だし。いい意味で当たり前のことですが意識も平等になってるなと思うんです。
また、男の子がかっこつけて良く見せようというのもないし。お酒飲んで男女交ざって雑魚寝するんですが、心配だと言うと「そういうことはないから、心配するほうがおかしい、お母さんたちの時代とは違うんだから」と言うんです。まるで兄弟姉妹みたい。すごく自然体で幸せそうだけど、これは少子化になるな、と実感しました。
昔から、お祭のときには子どもがたくさんできると言いますよね。男の人が男らしく、男しか入れない荒ぶれたお祭から帰ってきたときに、女が惚れるというような。本能的な部分が、いま本当に少なくなってきているのではないでしょうか。
なので、性差を意識しない仕事だったり、育児への関与だったりがナチュラルにできていくのかなとも思います。でも、その前に子どもができないかもという心配もありますね。
小林:間違いなく選択肢は、自然に増えていくのでしょう。ひとつの形を押しつけられる時代は、もう終わるのかな。ちょうど過渡期なのかもしれません。
■ 働くママをマーケティングでサポートしたい
小林:女性の感性やママの感性は、いまの時代にすごく重要だから、それを活かせるようなやり方があっていいのではと思います。昔は女性だけの広告代理店、「電通eye」とかありましたけど。いまは小さい会社だと、ママが集まって作ったものなどありますが、まだまだ社会的にダイナミックにインパクトを与えられる状況にはなってないですね。
松本:あるいは優秀な女性が独立して活躍していらっしゃる方々はいるけれど、大きな組織でうまく機能しているケースはあまりないような気がします。
関橋:本当は広告代理店のような業種が、先駆けて女性を強みにしたアプローチをしてもいいのに、旧態依然のままですね。広告代理店というビジネスモデル自体が、すでに古いからかもしれません。クライアントのほうが、マーケティングのリアルな部分に精通した女性がどんどん増えていますよ。
小林:ママたちがタッグを組んで旗揚げしたら、ぜったい需要があると思います。クライアントのマーケティングもそういう人をすごく必要としているので、いないの?と聞かれることも多いですから。
関橋:働くママは、マーケティング・ターゲットとしてコアになってきているわけですが、彼女たちに向けてのコミュニケーションは、どうあるべきだと思われますか?
サイボウズのウェブムービーに代表されるようなアプローチはいろいろ試みられていて、賛否両論巻き起こっていたり、中には炎上まがいの場合もあります。それでも存在意義があるから続けていった方がいいのか。あるいはまったく別のやり方が求められているのか? ただ、ああいうものもやりっ放しという感じが多いじゃないですか。コミュニケーションだけで終わっている。本来なら、国や行政が問題解決をしていかなければならないことだけれど、民間でもその先に何かつなげることはできないでしょうか。
小林:実は、そういうプロジェクトを立ち上げたいと思っているんです。求められているのは「実利還元型」。全体的に、女性のほうがリアルで実利主義なんですよ。理想につられてモノを買うということは、これからどんどん減っていくと思うんです。
ですから、何かモノやサービスを買うことで、自分たちママの世界に役に立つということがちゃんと回るようなシステムを、販促や広告でできるんじゃないかと。いろいろなNPOもあるし、ベビーシッターの会社などともつなげられるし。
たとえば、キャラクターグッズのベタづけがされてても、ママは別にうれしくない。子供が喜んでも、むしろ無駄な出費になってとほほです。ベビーシッター割引券がついていたほうが、よっぽどうれしかったりするわけです。もちろんママが本当にいいと思える商品でないとダメですが、ネットワーク化し、プロモーションを通じて還元できるようなマーケティングの仕組みを作ろうと思っているんです。
メーカーも流通も横串につなぎ、企業と社会の課題を抱えている人たちが協働する。そこにビジネスが生まれて、ウィンウィンになるということを実現したいんです。まさにいま、そこに来ているのではないかと思います。ほんとうに、お手伝いいただきたいんです。
こういうことは、お金を投じて支援をしてくれるような企業が集まって成り立つこと。大手のマーケティング企業でも働くママを調査する、多くのデータマーケティングの会社はありますが、「幸せな家族はこうですよ」「こういうインサイトでこういう理想像がこうですよ」とアドバイスして終わり。
それももちろん必要なことですが、もっと能動的に、こういうプロジェクトが実質的に仕組みを変えて、働くママをしっかりと実質的に救い、最終的には働くママたちの本音が集まり社会を変えていくようなジャーナリズムになる。それで、ママの働き方が変わるきっかけになったり、ママの商品購入のきっかけが変わるということが必要だと思います。そこには、PRもどんどん結びついて広がっていくでしょうし。
関橋:たぶん「ワーキングママ」というのをターゲットのひとつとしか見ていない。そうではなくて、いままでのコミュニケーションの枠組みから外れてやることが必要と言うことですね。
たとえば地域通貨というものがありますが、「ママ通貨」みたいなものがあって、「ママワールド」だけでしか使えない通貨の概念を入れるとか。そういうふうに、いままでのやり方をはずさないと。そうして初めて働きやすい、暮らしやすい、違う価値のあり方が生まれるかもしれないですね。
小林:いまは、課題がいっぱい出てきていて、賛否両論が出てきているとき。だからこそ、誰かがそういう枠組みを立ち上げて、イオンさんやりませんか、P&Gさんやりませんかとつないでいけば、みなさんとても興味を持って聞いてくださる気もします。ビジネスとして、ウィンウィンになるべきなんですよ。働くママをサポートするとかって、どうしても一部のママだけの意思やボランティアの力だけでは回っていきませんから。
関橋:いままでの枠組みからはみ出た、全く新しいお金が回る世界を作るということでしょう。そうすることで刺激されて、またみんなが違うことを考えてどんどん変わっていく。それで、新しい経済活動が生まれていく。
小林:そうやって、モノが売れたり、この商品いいねという反応が生まれてくる。感動するムービー作るお金があったらこっちに回してよ、と女性は現実的だから思ってしまうんです。
松本:弊社が関係していてママたちのネットワークを活用しているプロジェクトとしては、病院の予約システムから発展したネットワークがあります。乳幼児のママたちは小児科や耳鼻科は院内感染が怖いので、待合室に長時間いたくない。携帯で予約ができて待ち時間の目安も分かるので、病院の前で車を留めてその中で待つことができるほうがありがたい。ものすごい数のママたちが加入していて、それを導入しているお医者さんは人気が出ます。そのママたちのネットワークを、企業がニーズを探るパネルとして活用したり、ママたちと商品開発をしたりしています。
小林:それはすごくいいですね。私も利用したいです。そういうことをどんどん考えて、実現したいんです。
松本:私自身、クライアントの課題解決を自分たちらしいやり方でしていく、というPRの仕事は楽しいですし、それを続けてここまでになったこの会社を経営していくことには、責任もやりがいもあります。家族を養う重みもありますし、子供を産み育てられることもこの上ない幸せです。また、家を暮らしやすく整え、料理を作り、という作業も好きですし……。
そう省みると、やはり「やりたいことをやれている」自分があり、大変恵まれて幸せなことだと思います。「やりたいこと」や「ありたい自分」は人それぞれでも、その実現に少しでも近づけるような選択肢がある社会ができれば、理想かと思います。
小林:親がなくても子は育つと言いますね。母親が働いていて、普通のママより子供と接する時間が短くても、普通にちゃんと子供を育てることだってできるんじゃないかと思います。でも自分の親からよく言われることは、とにかく抱きしめてあげなさいということ。子供は理屈では分からないから、大切に思っていることを抱きしめることで伝えなさい、と言われそうしています。
関橋:松本さん、小林さん、長時間にわたってありがとうございます。夜を徹しても話したりないような感じですが、家では、お子さんがママを待っていらっしゃるでしょうから、この辺で終わらせたいと思います。最後が、抱きしめるで終わったところに、ママの愛を感じました。
さて、みなさんは何をお感じになったでしょうか。子どもを育てていく大変さ、責任のある仕事をしていく厳しさ。それは両立できることだし、そのためには覚悟もいる。また、いろいろな女性の働き方もある。会社で働いていたとしても、それはコミュニティでもある。育てることも働くことも、そこには人と繋がる社会がなければ、生きづらい世の中になってしまう。
おふたりのお話しから感じたことは、百人百様のあり方の重要性でした。同質化が進み、人と違うという当たり前の価値が見えにくくなっている現代社会。そこに対する本質的な解答を指し示していただいたようなインタビューでした。
そうすることで、新しいマーケティングや経済活動も現れてくる。やはり、次の時代を連れてくるのは、女性の真の知性なのでしょう。私を含めて、男性諸氏はもっと素直に耳を傾けなければなりませんね。
*元記事は以下のリンクから読めます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20150406/279631/