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◇的絞った「第四の矢」を 凜(りん)とした張りつめた冷気の中に新しい年を迎えた。前日までの喧騒(けんそう)がうそのような静けさの中で、元旦の新聞の分厚い紙面にゆっくりと目を通す。例年のことながら、過ぎし年を振り返り、迎える年がいかなる年となるかに思いをはせた。昨年は経済に明るさが見えてきたが、消費増税による駆け込み需要とその反動による落ち込みの落差が大きく、景気は一進一退、なかなかデフレ脱却とはならなかった。 アベノミクスについては、その効果とともに多くの課題が明らかになった。暮れの総選挙で安倍政権は、有効求人倍率の上昇とともに2012年7〜9月期から14年7〜9月期の間に「雇用を100万人増やした」ことを強調した。これに対し野党は、同時期に非正規雇用が123万人増え、正規雇用が22万人減ったことをとらえ、正規と非正規の格差が広がっただけと批判した。すると政権側は、13年と14年の7〜9月期を比較して、「正規雇用は10万人増えている」と反論した。 いずれの数値も間違いではないが、安倍政権は、日本経済全体がデフレからの脱却の途上にあることを強調し、野党側は国民一人ひとりの雇用が不安定なことを強調したかったのだろう。大胆な金融緩和による金利の低下と、急激な円安によって大企業の収益は大幅に回復したが、賃金が物価上昇に追い付かない中小企業や、経済が低迷する地方に対して今年どうするか、これがアベノミクスの大きな課題となった。 数々の企業再生を行ってきた冨山和彦氏は著書「なぜローカル経済から日本は甦るのか」の中で、日本の経済が世界を相手に戦うグローバル分野と地域密着のサービス産業中心のローカル分野とに分かれ、後者では大企業から下請けへと利潤が落ちていく「トリクルダウン」は起きにくいことを明らかにした。同氏は地方の最低賃金を引き上げたり、安全監督を厳しくしたりすることにより、著しく労働生産性の低い低賃金企業を市場から退出させ、サービス産業全体として生産性の高い企業へ集約化を図ることや人材教育を重視し、地方大学や専門高校で実務教育や技能訓練を実施することを主張している。筆者もこれには共感するところが多く、大企業や都市部に効果が偏るこれまでのアベノミクスに、ローカルに的を絞った「第四の矢」の追加が必要だと思う。今年の大きな課題である。 女性の活躍も今年の大きなテーマである。子ども・子育て支援については、昨年、小規模な保育施設も認可対象とし、スペースに余裕のない都心部での保育所の確保に一定の道筋をつけたことは評価されるべきだろう。他方、女性の活躍推進法案が総選挙の影響で廃案となるなど、掛け声の大きさの割には成果に乏しいのも事実である。特に、働き方の改革にはほとんど手がつけられていない。いまだに、働く女性は大学卒業後、キャリア形成の一番重要な20歳代後半の時期に結婚・出産をとるか仕事をとるかの二者択一を迫られている。企業経営者には相当な覚悟で問題の解決に取り組んでもらいたいが、まず、さまざまな数値の「見える化」が必要ではないか。 コマツの坂根正弘相談役は、社内の30代の女性について、「東京本社は子どもの数が0・7人、関西や茨城、栃木の工場では1・2〜1・3人、会社発祥の地である石川の小松では1・9人、管理職の女性に限定すると2・8人と大きな差が出ている。要するに、女性が昇進しようと思ったら子どもの出産をあきらめよというのは東京の論理であって、石川ではむしろ偉くなる女性の方が子どもを多く出産している」という興味深い話をしている。女性の社会進出を阻む要因や偏見を打破するためにも、まず第一歩として各種指標の「見える化」に取り組む必要がある。 経済が低迷する地方や、不安定雇用で苦しむ女性、若者をどうするかは、広い意味での社会の格差問題だろう。筆者は正月休みに話題の書、トマ・ピケティの「21世紀の資本」を読んだ。同氏は資産を持つ人に富が集中し、持たない人々との格差が拡大することを資本主義の宿命と分析している。今年は分配問題や「資本主義(市場経済とグローバリズム)と民主主義」のような根本テーマについても議論が必要だ。 *元記事は以下のリンクから読めます。 http://mainichi.jp/shimen/news/20150104ddm002070068000c.html